日本は世界でも屈指の長寿国で、平均寿命は男女ともに80歳を超えており、高齢者といわれる60歳の定年を迎えても元気な高齢者は多くいますが、定年を迎えると今までしていた仕事を辞めてしまう人が沢山います。
それは、高齢者の定年後の再就職の状況は年齢的や勤務形態などの問題で、厳しい状態にあることが要因としてあります。
平均寿命などから判断しても60歳で定年は早すぎるという声も多く、企業も定年延長や再雇用契約などを行って人材の確保を行っています。
そこで今回は、これから元気な高齢者の再就職や求人の状況について紹介します。
高齢者の再就職は可能か?
高齢者は再就職をしたいのか
結論からいうと、高齢者の就業希望と企業側の人手不足が相まって、現在の就業状況としては、「再就職は可能である」といえるでしょう。
まずは、高齢者自身が仕事を続けたいと考えているのかということを調査資料からみていきましょう。平成28年度高齢者社会白書によると、65歳を超えても働きたいと考えている人は75%もおり、また、60歳以上の人口の約半数に近い42%の高齢者が「働けるうちは働きたい」と勤労意欲が非常に高いようです。なかには定年を迎えた人だけで自分たちの築き上げた技術力や経験を生かして会社を立ち上げる高齢者もいるようです。
高齢者の再就職の需要はあるのか
高齢者の再就職の需要はあります。細かくは、後ほど有効求人倍率をもとに説明することとし、ここでは概略を書いていきます。
日本は若い世代の晩婚化、未婚者の増加、出生率の低下などで深刻な少子化になっています。その結果、労働力の中心的年代である15歳~29歳の若い年代の労働者の人口が2025年までに400万人減少すると予測されています。
このままいけば、労働者全体の人口も減少することになり、企業の生産性の低迷につながり日本の経済成長に影響することも考えられます。経済成長をするためには、労働力は不可欠な要素であり、高齢者の労働力に注目が集まり、高齢者の再就職の需要が生まれています。
実際に国、企業、自治体では労働人口の減少を食い止めるための対策として高齢者の雇用を打ち出しています。
企業と政府の高齢者の雇用対策
政府が行っている高齢者雇用確保措置
日本政府は、高齢者が定年後も働きやすい環境を整備することに重点を置き、65歳までの高齢者を確保するために高齢者雇用確保措置を取りました。
この措置によって、以下の3つのいずれかを企業に義務付けました。
- 65歳までの定年の引上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入
- 定年の廃止
定年の廃止が、グローバルな視点でみたときの働き方の標準となりつつありますが、現状の日本では、1.や2.が大半でしょう。
しかし少なくともこの措置によって、60歳で働き口が無くなるということは少なくなりました。希望すれば、働ける環境が整ってきたともいえます。
企業における高齢者の雇用対策
日本では労働人口が減少の傾向にあり、各企業は人手不足の状態です。しかし、若い年代の労働者が急に増えることはありません。そこで企業の人手不足の対策として、定年退職した高齢者に期待が寄せられており、国も企業もいろいろな高齢者の雇用対策を打ち出しています。
企業が高齢者の雇用対策を積極的に取り組む背景には、「高齢法」が改正されたことが影響しています。
高齢法の改正により、定年の延長(60歳から65歳)が行われ、企業が高齢者の雇用対策を容易にできるようになりました。
企業も積極的に高齢者の雇用対策を講じるようになり、現在、国内企業の9割に近い企業が、定年延長などの「高齢者雇用確保措置」を行っています。
高齢法(高年齢者雇用安定法)
高齢者が、少なくとも年金の受給開始年齢までは、意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を行うための法律
今までのように、60歳で定年となると年金開始年齢の65歳までの5年間は収入が激減していました。これでは、生活に影響が出てくるため、定年延長を推進して、自ら収入を得られるようにすることが高齢法の目的です。
企業も高齢者の雇用対策として、定年の延長を実施するとともに、高齢者が働きやすい職場環境の整備を行ってきています。しかし、そこには現役で働いていた時の待遇や条件との違いが出てくることをよく理解しなくてはいけません。
高齢者の雇用と助成金
高齢者を雇用するには、事業主も高齢者本人もさまざまなリスクを考えなくてはいけません。なかでも、給与については直接生活に影響するため、最も重要な課題です。実際に、再雇用の場合の給与は、現役時の5割から7割程度まで下がることがあるようです。
給与の減少は大きな問題ですが、個人レベルで改善でできる部分は、あまり多くないでしょう。
そこでここでは、再雇用で給与が大幅にカットされて生活に不安がある人たちのために、即効性のある「制度」の利用について挙げていきます。給与の差額を補填する給付制度とその条件には次のようなものがあります。
◆高年齢雇用継続給付の条件
- 支給額=※賃金低下率が61%以下の場合は支給対象月の賃金の1割5分増し、61%から75%未満の場合は支給対象月の賃金の0から1割5分増しの給付
- 年齢は60歳以上65歳未満
- 雇用保険の一般被保険者であること
- 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
- 60歳以降の賃金が今までの賃金の75%未満であること
- 育児休業給付金や介護休業給付の支給対象となっていないこと
※低下率 「低下率」(%)=支給対象月に支払われた賃金額/60歳到達時の賃金月額×100
◆高年齢再就職給付金の条件
- 支給額=支払われた賃金×最大 15%
- 60歳以上で失業保険を一部受給中に再就職した人
- 再就職した際の賃金が、退職前の賃金より75%未満になる人
- 失業保険の支給残日数が100日以上残っている人
- 再就職した際に、1年以上雇用されることが確実な人
- 雇用保険を5年以上払っていた期間がある人
◆注意点
- 失業保険の支給残日数が100日以上残っているか(100日未満の場合は受け取れない)
- 再就職後1年以上の雇用が確実であること
そのほかに高齢者を雇用する事業主に対して定められた規定に基づき、就業規則の整備、見直し、高齢者の再雇用契約を無期雇用への見直しなどを実施した事業主へ「65歳超雇用推進助成金」などを支給することが法的に定められています。
高齢者の求人状況
高齢者の雇用確保措置の実施状況
下記資料が高齢者の雇用確保措置の実施状況です。
この資料からもわかるように、大半の企業が高齢者を受け入れる「高齢者雇用確保措置」を実施しています。
高齢者雇用確保措置を実施している約16万社のうち再雇用などの「継続雇用制度の導入」を行っている企業は80.3%、定年延長を実施している企業は17.1%、定年制の廃止は2.6%と報告されています。
この調査結果からわかるように、高齢者雇用確保措置の整備で高齢者を雇用できる環境の整備は整ってきています。
有効求人倍率と完全失業率の推移
では続いて、高齢者雇用確保措置が企業の求人にどのように影響しているか「有効求人倍率」や「完全失業率」を見てみましょう。
◆有効求人倍率
◆完全失業率
引用先:『人事院定年後の仕事』
有効求人倍率が1倍以上であれば、職を探している人よりも求人が多くなります。つまり、平成29年時点では50歳以上の有効求人倍率が1倍以上なので、就業しやすい状況にあるといえます。
また高齢者における完全失業率も非常に低いことがわかります。
これらの統計から、高齢者の再就職はしやすく、失業もしにくいということが分かります。
高齢者が再就職をしないのはどういった理由か
しかし、高齢者の求人状況がよくなってきたことに喜んでばかりではいられません。それは、高齢者が再雇用された時の雇用形態や条件が再雇用前と違ってくるためです。次のような違いで再就職を踏みとどまる人もいます。
◆再就職をしない理由
- 今まで培ってきた技術や経験、能力が生かせない
- 雇用形態が正規社員ではなく非正規社員が多い
- 雇用形態が変わるために健康保険も変わる
- 月収が現役の時より半分近くまで減額になる
1.については、重要なポストや高い能力があった人が、急に再雇用時には、全く別の仕事をするようなケースです。希少価値の高い資格や、何らかの需要のある技術を身に着けていた場合は、その待遇に納得できない場合もあるでしょう。その場合は、再雇用ではなく、その能力が生かせる職場に転職していくというのも方法の1つでしょう。
転職のリスクは4.の給与に関する部分でもありますが、再雇用時の収入予測と転職時の収入予測を比較してみるのも良いでしょう。また、日本も欧米を手本に、同一労働同一賃金という考え方を取り入れようとしています。この方法であれば、年齢ではなく、仕事内容によって給与が変わるため、日本のような再雇用時に給与が一気に下がるということはありません。確かな能力がある人にとっては理不尽な扱いを受けなくなる雇用制度のシフトしていくでしょう。
再就職・再雇用後の高齢者の雇用形態
とはいえ、現実問題として、雇用形態や賃金が下がるというのが日本の現状です。そのため、雇用形態は給与、生活に影響を与えることから、再就職の時の雇用形態について紹介します。
総務省が発表した「就業構造基本調査」(平成24年)によると次のような報告がされています。
◆就業構造基本調査
- 調査対象者:60歳以上の雇用者7,187千人
- 正規職員:2,221千人(30%)
- 非正規職員:4,965千人(70%) (内訳)パート32%、アルバイト10%、派遣2%、契約社員10%、 嘱託10%、その他6%
高齢者が再就職するときには、上記のようないろいろな雇用形態があります。雇用される高齢者は定年後の自分のライフスタイルに合わせた雇用形態を選択します。
20代~60代の方にとって、正社員になることが給与面や待遇面でメリットが大きく、就職活動や転職活動では当然のように正社員を目指しますが、これが高齢者の就業構造では、正規職員30%、非正規職員70%となっており、逆転しています。
正規社員への希望者が少ない理由
個々の雇用形態にはそれぞれ特徴がありますが、ここで注目したいのが正規社員への希望者が少ないことです。
◆正規社員の(メリット)
- ボーナスや社会保険などの待遇面は安定している
- 福利厚生面でも充実している
◆正規社員の(デメリット)
- 自分のライフスタイルに合わせられない
- 就業規則に定められている時間は最低限勤務する必要がある
- 転勤や残業がある
- 有給休暇は与えられるがとれる環境があまりない
高齢者が再就職する場合、現役時代に定年までの長い間、社員として会社の規則に縛られてきたために、定年後は自由にしたいと考える人も多いようです。また、仮に正社員として雇用されたとしても、仕事内容が変わらず、賃金が大幅に下がるようなケースもあります。
そのため、再就職時にはある程度自由に働ける雇用形態のパートや契約社員を選ぶ傾向があります。
再雇用時の収入
再雇用時の収入の満足度は低い
厚生労働省の平成24年中小企業労働条件等実態調査「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」によると、再雇用後の賃金に対して満足している人は44%と低く、45.9%の人が定年前の5割~7割まで給料が下がっています。老後の生活を支える定年後の給料が大幅に削減されることは、生活への影響が問題です。
そこで定年前に比べて給料が大幅に下がった場合、雇用保険から補填の目的で給付される「高年齢雇用継続給付金」制度があります。
再就職前後での給与の格差
再就職先での給与は、一般的には前職と比べて減少する傾向にあります。
仕事の内容が変わることや、スタッフ職として現役社員を助ける働き方を求められたることなど、が理由として挙げられます。ただし、同じ会社で働き続けたとしても、再雇用時の給与は下がることが多いでしょう。どちらにしても、高齢者にとって厳しい雇用環境が考えられます。
日本においては、60歳以上の場合には、年金を考慮した賃金額が設定されることも多いようです。
高齢者の所定内給与
再就職先は関連会社やグループ会社など比較的小規模の企業になることが多いようです。
下記の高齢者の所定内給与の一覧で企業の規模別給与水準を見てみます。経験年数0年の欄は採用(再就職)時の賃金、30年以上の欄は長期勤続の従業員の賃金水準です。
なお、60歳以上の再就職の賃金相場は低い傾向にあります。
※所定内給与
所定内給与とは、決まって支給する現金給与のうち、超過労働給与(時間外、深夜勤務、休日出勤、宿日直などの各手当)を差し引いたもの
上記の高齢者の再雇用時の所定内給与をみても60歳~64歳の水準は他の年代より低くなっています。そこで給与の補填として「高年齢雇用継続給付」などの給付制度うまく活用していくことが再雇用では重要なポイントになります。
まとめ
今の高齢者は平均寿命も延びて、趣味や、スポーツを楽しむ高齢者が増えてきています。とくに60代、70代の高齢者は昭和の日本経済を支えてきた強力な労働力の中心的存在でした。
そのような高齢者が再び企業の戦力として活躍したいのかは本人にしかわからないことでしょう。
しかし、働きたい高齢者と人手不足の企業の需給がマッチしているため、もし働きたいと考えているのであれば、ぜひ再雇用や再就職に前向きに取り組んでみてください。
近年では、webサイトで無料で簡単に就職先を探すことができます。まずはそういったところで、自分の能力が生かせるような職場がないか探してみるのも良いでしょう。
今回は、大手企業の就職サイトを2つ載せておきました。今後、別の記事で高齢者の求人と再就職活動方法について書いていきます。そこでは今では主流となったwebでの就職やそれ以外の方法も取り上げていくので、その記事も参考にしていただければと思います。
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