今年も暑い夏がやってきましたね。
夏になると、熱中症に悩まされることも多くなるでしょう。
特に高齢者は、加齢ともに体のいろいろな機能が低下しています。そのため、夏の暑い日を乗り越えるための体温調節機能が低下して、熱中症になりやすいので注意が必要です。たかが熱中症だと、軽く考えていると、最悪「死亡」することもあります。
そこで、高齢者が夏を乗り越えて、熱中症にならないためにはどうしたらいいかを紹介します。
高齢者の熱中症の特徴
熱中症患者の年齢区分
熱中症は梅雨から暑い夏にかけて、体がまだ暑さに慣れていないこの時期が最も発症しやすく、特に高齢者にとっては危険な季節です。
本当に高齢者の熱中症患者が多いのか?と疑問を持つ方もいるかもしれません。そこで下記に、年齢区分別の熱中症患者の緊急搬送状況をまとめました。
◆(速報)2019年7月8日~7月14日熱中症による緊急搬送状況
引用:『消防庁熱中症情報』
この速報値でわかるように、毎日でている熱中症による緊急搬送者の半数以上が高齢者です。
高齢者の熱中症での死亡者数
高齢者は熱中症にかかりやすいのは、上の図を見ると分かります。熱中症になると、最悪のケースでは、死亡することもありえるので、軽く考えてはいけません。
とはいっても、熱中症による死亡者数とその中での高齢者の割合はそれほど多くないと思っている方も多いでしょう。先程の「熱中症による緊急搬送状況」では、約半数が高齢者でした。しかし、次の表から分かるように、熱中症での死亡者数で見ていくと、何と毎年の死亡者の約80%を占める状態なのです。
◆高齢者の熱中症による死亡者数推移(単位:人)
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
死亡者総数 | 1,077 | 529 | 908 | 621 | 635 |
65歳以上 | 833 | 428 | 781 | 492 | 496 |
割合 | 77.3% | 80.8% | 80.7% | 79.2% | 78.1% |
引用先:『厚生労働省人口動態統計』
熱中症になる理由
私たちの体は暑さや寒さなどの環境の変化に順応できる「体温調節機能」を持っています。そのため、気温が上昇しても、体温調節機能が働き「汗」をかくことや、皮膚温度の上昇によって、熱が体外へ放出されます。
しかし、上昇した体温を下げ適度な体温を維持するこの体温調節機能が、高齢になると低下してしまいます。そうすると、体温上昇と体温調節機能のバランスが崩れて、体内に熱が溜まってしまうのです。その結果として、熱中症になってしまいます。
高齢者の熱中症の特徴と言えるのが「脱水症状」です。高齢者が熱中症になると、通常成人の場合体重の60%ある体内の熱を下げる体液(※1)が50%くらいまで減少します。体液が減少して体内の熱が上昇すると「脱水症状」です。
高齢者の熱中症の場合、脱水症状による死亡事故へ発展することが多いため、それを防ぐ予防策としては、まず脱水症状の危険性を知り、次に予防策を講じることが大切です。
※1.体液とは、水を主成分としカリウムやナトリウムなどを含む液体をいいます
高齢者の熱中症の原因と要因
高齢者の脱水症状の原因
高齢者の熱中症では「脱水症状」が理由で死亡する人が多くいます。では、なぜ高齢者の熱中症は脱水症状が多いかというと、以下のような原因があります。
◆高齢者の熱中症で脱水症状の原因
- 通常の成人では体重の60%が体液だが、高齢者の場合は体重の55~50%になっている
- 高齢者は温度に対する感覚が弱い
- 体液減少により体温調整がしにくい
- エアコンを使用しない高齢者が多い
- 加齢により喉の渇きを感じにくい
高齢者が熱中症になりやすい環境
高齢者が熱中症になりやすいのは、発症する条件が揃いやすいことも理由として挙げられます。その条件とは「環境」「からだ」「行動」の3つです。
◆(環境)どのような場所が熱中症になりやすいか
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 日差しが強い
- 独居生活で締め切った室内
- エアコンがない
- 急に暑くなった
- 熱波の襲来
◆(からだ)どんな体の状態の人がなりやすいか
- 高齢者の肥満
- からだに障害のある人
- 持病のある人
- 低栄養状態
- 下痢などで脱水状態
- インフルエンザなどで体調不良
- 二日酔い、寝不足など
◆(行動) どんな状態になると熱中症になりやすいか
- 激しい運動のあと
- 慣れない運動の後
- 長時間の野外での作業
- 水分補給がしにくい
ほとんどの高齢者が、上記の項目に該当して脱水症状を引き起こします。そうならないための対応策として、温度のコントロールを行うことが重要です。
脱水症状の初期の段階では顔のほてり・立ちくらみ・めまいなどの症状が出ます。そのような時には体を冷やす・水分を補給するなどの対応をすることで体温をさげ脱水症状を防ぐことができます。
高齢者は早期対応が年齢的にも困難な状態ですが、早めに適切な対応を施さないと糖尿病や排尿障害などの病気の予兆である可能性もでてきます。症状が進行しないうちに気づくことが重要です。
高齢者の熱中症の兆候
高齢者の場合、自分が熱中症を発症していることに気づかないことが多いため、家族や周囲の人が気づいて適切な対応をすることが大切です。
特に、高齢者に次のような兆候が見られた時には、敏速な対応が必要です。敏速な対応を怠った場合、死亡につながる可能性が高くなります。
どのような兆候かは次に挙げます。
◆高齢者の熱中症の兆候
- めまいや立ちくらみ、顔のほてり
- 筋肉痛や筋肉のけいれん(こむら返りなど)
- 倦怠感や吐き気、頭痛(体がぐったりし、力が入りにくい状態)
- 汗のかきかたがおかしい(何度ふいても汗が出る、もしくはまったく汗が出ない状態)
- 体温が高く皮膚が赤く乾いている
- 呼びかけに反応しない、おかしな返答をする
- まっすぐ歩けない
- 自分で動けない、水分補給できない
上記のような兆候が見られた時には、状態が軽度・中度・重度のどれに当てはまるかを見極めて、それにあった敏速な対応が必要です。
特に「呼びかけに反応しない」「まっすぐ歩けない」「自分で動けない」場合は意識障害を引き起こしている可能性が高く、熱中症が重症化していると考えられます。そのため意識障害が起きている場合は、早急な対応が必要です。
脱水症状の危険性
高齢者の脱水症状の兆候で最も重要なサインが「喉の渇き」です。高齢者の場合、このサインがみられた時は危険な状態と考えるべきです。高齢者は「喉の渇き」を感じる機能が低下しているために、体内の水分が不足して脱水症状になります。
体内の水分が不足すると、次のような危険性が発生します。
◆水分の低下と症状
- 水分を5%失う :脱水症状や熱中症などの症状が現れる前
- 水分を10%失う:筋肉のけいれん、循環不全が起こる
- 水分を20%失う:死に至る
そのほかにも、脱水症状になると、水分が不足することで血液濃度が増し、血液の流れが悪くなって脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険性を伴います。
高齢者の熱中症の予防と対策
高齢者の熱中症に対する対策方法
熱中症に関する、注意ポイントは以下の3つです。
◆高齢者の熱中症に対する注意ポイント
- 効果的な水分補給(経口飲料など栄養分を含んだ水分補給)
- 部屋の温度調整に注意する
- 1日1回発汗の運動をする
効果的な水分補給
このような事態を防ぐには、高齢者は日頃からの予防対策をする必要があります。高齢者の日頃からの熱中症予防対策として「効果的な水分補給」が最も重要となります。
◆必要な水分補給の仕方
- 1日の水分摂取量として1500mlを目安とする(水、お茶などのほかにも、料理や汁物でも補給することで1500ml以上の水分摂取が見込まれる)
- コップ1杯程度(200ml程度)を1日6~8回くらいに分けて飲む。
- 朝起きた時、朝食、昼食、夕食、入浴後、寝る前など、水分補給は日頃から習慣化し、体内の水分量を常に適量にしておくこと
- 昆布茶やみそ汁などミネラルが含まれ、塩分補給もできるものも適度なら良い(塩分制限の方は注意)
高齢者の場合「喉が渇いてから」では、SOSが間に合わないかもしれません。水分の補給は栄養補給と同じくらいに重要なので、日頃から積極的に摂取するようにしましょう。
高齢者が若い人と同程度に発汗した場合、脱水状態になりやすく、回復に時間がかかります。これは高齢者が、のどの渇きを感じる機能が低下するためで、それに合わせて腎機能が低下していることが要因として考えられます。 一般的に脱水が進むと、のどの渇きが起こり、自然に水を飲む行動をとります。
しかし、高齢者は脱水が進んでも、のどの渇きが起こりにくくなっています。これは脳での察知能力が低下するために生じる症状です。
そのため、発汗する機会が多くなる夏には、高齢者はのどの渇きが起こらなくても、早め早めにこまめな水分補給を行うよう注意が必要です。
部屋の温度調整
高齢になると、暑さを感じにくくなります。しかしそれは、感じにくくなっているだけです。あまり暑くないからと、エアコンや扇風機等を使わずに、部屋の温度が高いままでいると、熱中症になってしまいます。
熱中症にならないためには、室温が28℃未満になるようにするのが好ましいでしょう。
また、お風呂上がりなどは、部屋の温度が上がってしまいます。そのため、エアコンを入れたり、窓を開けて涼しい風が入るようにするなど、部屋の温度を下げることが必要です。
また、身体から約800mlの水分失われてしまうので、入浴の前後には水分を摂るようにすると良いでしょう。
適度な運動
高齢になっても日常的な運動習慣を身につければ、体温調節能力の老化を遅くらせることが可能です。運動直後30分以内に牛乳1~2杯を補給することで、血液量を増加し、熱放散能力を改善することが報告されています。
ただし、暑い時期の運動は、熱中症になる危険性があります。そのため、朝や夕方の涼しくなった時間帯に、十分な水分補給をしながら運動をすると良いでしょう。
高齢者の熱中症の予防商品
熱中症はこの季節になると、幼児から高齢者まで誰もが発症する可能性があります。
そのため、色々な企業から「熱中症対策グッズ」が発売されています。こういった商品を利用しながら、熱中症対策をすると良いでしょう。ここでは、いくつかの商品を抜粋して紹介します。
冷却タオル 超冷感 クールタオル
熱中症対策グッズとして最も人気の高い商品で、首筋や体の部分を瞬間的に冷やし体温を下げる効果的な商品です。価格的にも500円くらいからあり、コスパが良い商品です。
携帯扇風機
最近よく、首からこの扇風機をかけて顔にむけて風を送っている光景を見かけます。携帯扇風機は小型設計なので持ち運びには非常に便利です。会社、車内、通勤中、室内、アウトドア、買い物、夏場の花火大会や祭り、スポーツ観戦などのイベントでは大活躍します。扇風機が小さくても、清涼感は十分に感じる事はできます。熱中症、暑さ対策グッズとしていま人気です。
冷却スプレー
冷却スプレーはバックの中に収まり、持ち運びに便利です。利用して20~30分程度は冷感が持続します。
熱中症対策 帽子
暑さ対策の基本の中で、誰でも思い浮かべるのが帽子です。熱中症対策を施した帽子は、紫外線カットや冷感を施してあり、外出の際の必須アイテムです。
経口飲料
気温の上昇により、多くの汗をかくことで体内の水分が減少すると脱水症状になります。防止策として、水分補給を挙げてきましたが、単に水分だけの補給をしても、発汗により減少した栄養分を補うことはできません。そこで必要になるのが、減少したナトリウムや他の栄養分を補うことです。経口飲料はそれらを補うことができる飲料です。
引用:厚生労働省『あんぜんプロジェクト』
まとめ
高齢者にとって熱中症は身近な病気です。熱中症にならないためには、水分補給や部屋の温度管理、食事などの日常生活での環境を日頃から注意しておくことが重要です。
その為には、本人が気をつけることは勿論ですが、周囲の協力と管理も必要となってきます。特に、家族に要介護者がいる場合などは、高齢者のが熱中症になりやすいことを理解し、気をつけるようにしましょう。
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