皆さんは「高次脳機能障害」を知っていますか?
「高次脳機能」とは言語や記憶、行動、状況判断、思考などの「高度な次元の脳機能」のことです。ここに障害が起きることを「高次脳機能障害」です。この病気になった場合、日常生活でも色々な支障が出ることは想像できるでしょう。
そこで今回は、高次脳機能障害の症状と、対応方法について書いていきます。
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害とは、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)や交通事故などにより、脳が部分的に損傷を受けたために生ずる、言語や記憶、注意や情緒といった知的な障害をいいます。発症の原因としては、脳卒中が80%、事故が10%、その他が10%となっています。
高齢になると、脳卒中になってしまう可能性が高まるので、結果的に高次脳機能障害になる可能性が高まります。
高次脳機能障害の症状
症状の種類
まずは、高次脳機能障害の症状の種類についてです。高次脳機能障害の症状は主に以下の5つです。
◆高次脳機能障害の症状の種類
- 失語症
- 失効
- 失認
- 記憶障害
- 注意障害
失語症
言葉をあやつる中枢(言語中枢)やその神経繊維が障害されると、言葉を話したり、理解したりすることができなくなります。
※言語中枢には異常がなく、発声・発語器官に関係した障害によって正しく言葉を発することができない構語障害とは異なります。これは高次機能障害ではないため、ここでは割愛します。
失語症は次の4つがあります。
◆失語症の種類
- 運動性失語(ブローカ失語)
- 感覚性失語(ウェルニッケ失語)
- 健忘失語
- 全失語
運動性失語(ブローカ失語)
自分の話す言葉に間違いが多く、スムーズに話すことができません。書字も正しく行えませんが、他人の言葉の理解は可能です。
感覚性失語(ウェルニッケ失語)
他人の話す言葉や、書かれた言葉の意味が理解できない状態です。話す言葉はスムーズではありますが、言葉に間違いが多く、支離滅裂であることが多いです。音読や言葉の復唱も困難で、書字は可能ですが、何を書いたのかがよくわかりません。
健忘失語
話したい語が言えず、適切な名詞が出てきません。そのため、非常に遠回しに、くどくどと説明する状態です。
全失語
運動性失語と感覚性失語の合併した状態で、意思の疎通は不可能となります。
失行
失効になると、学習された動作や行動が正しく行えません。たとえば、「さようなら」と手を振る動作が、帽子に手をやる動作になってしまうなどの状態です。
特殊的な失行として、着衣失行があります。衣服であることは認識できても、身体部位と衣服の対応部分とを正しく適合させることができず、衣服が着られない症状です。
失認
失認は次の3つに分けられます。
◆失認の種類
- 視覚失認
- 聴覚失認
- 半側空間無視
視覚失認
物を見ても、何を見ているのかがわからない状態です。たとえば、ハーモニカを見ても何か認識できませんが、音を出して聞かせるとハーモニカと認識できます。
聴覚失認
動物の鳴き声が認識できない、音楽を聞いてもメロディー・リズムを認識できないといった状態です。
半側空間無視
反対側の自分の半身や反対側の空間の認識ができません。たとえば、りんごを見ながらりんごの絵を書いてみても、半分まできて途切れてしまいます。
記憶障害
自分のしたことや言ったことを覚えていなかったり、言われたこと、やろうとしたこと、どこに物を置いたかなどを忘れてしまう状態です。
注意障害
必要なものが探せない、話しかけられてもすぐに返事ができない、集中力が持続しないので、作業をやり遂げることができないといった状態です。
高次脳機能障害の診断と治療
診断方法
まず、前述の様々な症状が起こっていることと、MRIやCT・脳波の検査によって脳に損傷が確認できる場合に診断されますが、先天性疾患やアルツハイマーなどの進行性疾患が原因の方は除外されます。
脳の損傷が軽度の場合は、MRIで確認できない場合があります。その場合は、PETという特別な機械でなければ正確な診断をすることはできません。軽度の脳の損傷の場合、障害が外部から見た場合でも分かりにくいです。また、当人の自覚症状も薄いことが多いため、隠れた障害と言われています。
治療方法
高次脳機能障害の治療はリハビリテーションが基本となります。それぞれ残っている脳の機能を働かせていくと、適切な回復につなげることができます。一般的には発病後、時間の経過とともに治療(リハビリ)の効果が薄くなると言われています。その為、発症後は早期に治療を行うことが重要です。
日常生活での様々な症状への対応方法
失語の対応
- 複雑な話は理解できないときは、短く簡潔に、ゆっくりと話します
- 相手が理解していそうでも、実は理解していない場合は、もう一度繰り返し話すか、別の表現に変えてみます
- 言葉だけでは理解が難しいときは、身振りや文字、実物などを使って表現し説明します
失行の対応
- 歯ブラシが使えないなど、日常的に行っていたことができなくなる時は、使う物品を最低限に減らし、もともと使い慣れた物を使います
- 必要に応じて介護者ができない部分を介助します
- 衣服を上下・前後に着間違える、うまく着れないといった時は、衣服の袖や裾に目印をつけたり、ボタンではなくマジックテープに変えたりします
半側空間無視(失認)の対応
- 右側(または左側)の食事を食べ残していまう時は、食事を見やすい側に置きます。
- 右側(または左側)から話しかけられると反応しにくいことがあるため、反応しやすい側から声をかけるようにします
- 右側(または左側)の意識が薄くなり、車椅子のブレーキをかけ忘れたりすることがあるため、介護者は見づらい側に注意を促したり、見落としがあれば指摘します
記憶障害の対応
- メモ用紙を決まった場所に置き、言われたことをすぐに書き留めるようにします
- 用事や約束事は、ホワイトボードやカレンダーを利用します
- いつも使う物品の置き場所は固定し、使ったら元に戻す習慣をつけます
- 必要に応じて、ふせんやシールなどを利用します
- この時間は何をするのか、次は何をするのかをわかりやすくするため、決まった日課で生活を行うようにします
注意障害の対応
- 可能であれば、本人に注意障害があることを自覚してもらいます
- 注意障害の症状がみられた時は、1つずつ、短く簡潔に指摘します(同時に2つ以上のことを指摘してしまうと混乱してしまいます)
- 周りがガヤガヤしていたり、視覚的情報が多いと注意が散漫しやすいため、家の中の整理整頓を行います
まとめ
高次脳機能障害の概要や症状、その対応方法について書いてきましたが、ここに挙げたのはほんの一部で、症状やその方をとりまく環境は個人によって様々です。
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