もし親の介護が必要になったとしたら、皆さんなら仕事を続けますか?
介護のために会社を離職するか、それとも仕事と両立するか、悩むことになるでしょう。
実際に、仕事と介護の両立をすることは大変です。そしてそれができないために、仕事を辞めてしまう「介護離職」がいま大きな社会問題になっています。
今回は、自分が介護を担うかもしれない方へ、介護離職しないためにはどうしたらいいかを書いていきます。
目次
介護離職の原因
介護離職とは
勤めている会社を介護や看護が理由で退職することを「介護離職」と言います。
介護離職の原因となる高齢者の介護状況については平成30年版高齢社会白書によると、高齢者は脳血管疾患(脳梗塞、脳卒中など)認知症、心疾患(心臓病)などの発症率が高くなり、それに伴って介護の必要性も高くなります。
介護離職の選択
脳血管疾患をはじめ介護が必要になる疾患を発症すると、まず考えなければいけないのが「誰が」「どこで」「どのような介護」を行うか、その結果次第で介護離職という選択肢から逃れることもできます。
内閣府の平成30年度版高齢社会白書の「どこでどのような介護を受けたいか」という要介護者の要望の調査結果によると、次のような結果が出ています。
◆どこでどのような介護を受けたいか
- 家族に頼らず生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい 37.4%
- 自宅で家族中心に介護を受けたい 18.6%
- 自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい 17.5%
このように介護受ける場所は「長年住み慣れた自宅で介護を受け最期の時も自宅で迎えたい」との要介護者の要望が多く、全体の70%以上の方が自宅での介護を希望しています。そこには長年生活してきた自宅が、安心と落ち着きが持てる場所であるということが在宅介護を希望する理由なのではないでしょうか。
介護離職数と介護離職率
要介護者の希望する在宅介護を行うためには、「人」「物」などの環境の整備が必要になってきます。必要になってくるものは、例えば、次のようなものが考えられます。
- 自宅に介護できる家族が同居もしくは近所のいるか
- 自宅を介護できる設備の環境づくりができるか
- 介護する家族は介護と仕事が両立できるか
上記では、代表的な項目を取り上げましたが、現実はもっと細かな問題があります。在宅で介護をする場合は、まず、「介護のための犠牲」というものが存在することを理解する必要があります。
この「介護のための犠牲」の代表的なものが、介護離職で在宅介護に専念するために、勤めていた企業を退職するということです。
2018年7月、総務省が公表した「就業構造基本調査結果」によると、次のような介護離職についての調査結果が報告されています。
- 2016年1年間の介護離職者数 8.5万人
- 女性の離職者 6.2万人(73%)
- 男性の離職者 2.3万人(27%)
介護離職の人数は、介護保険法が施行された2000年から2013年頃までは平均5万人~6万人を推移していました。しかし近年になると人数は10万人前後に増加しています。この増加の背景には、急速な高齢化に伴い介護を必要とする高齢者が増えた事にあります。
介護離職を選択する約10万人の人は、介護と仕事は両立できると思って介護生活に入りますが、現実は「介護は想像したより大変」とわかります。そして仕事と介護の両立が困難になり、その結果「仕事を辞めて介護に専念したら楽になるのでは」と思い違いしてしまいます。
実際には、介護離職すると、いろいろなところに影響が出てきて後悔するケースが多くの離職者に見られます。
介護離職による影響
介護離職は選択したくてするのではなく、選択せざるを得ないと感じる人も多いのが事実です。その原因としては、職場環境があります。次の調査結果を見てみてください。
介護離職の原因 | 男性 | 女性 |
仕事と介護が両立する事が困難な職場だった | 62.1% | 62.7% |
自分自身の健康状態が悪化したため | 25.3% | 32.8% |
介護に専念したかった | 20.2% | 22.8% |
施設への入所ができなかった | 16.6% | 8.5% |
引用:『平成24(2012)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書』
このように、仕事と介護の両立が困難な職場というのは、想像以上に多くあります。
そして、介護離職を選択せざるを得なくなった従業員は、離職したことで、収入をはじめとして、色々なものに影響がでてきてしまいます。
さまざまな影響
では介護離職をすることによって、起きる弊害について考えていきましょう。まずは介護離職者本人についてです。
◆介護離職本人
- 月収が無くなり、それに伴って退職金や年金にも影響が出る
- 介護が落ち着いた時、再就職を考えても年齢的に難しい
- 肉体的、精神的にも限界を感じる
- 介護に専念して自分の時間がなくなる
- 収入が減ることで、家計が厳しくなる
続いて、本人ではなく介護離職者を出してしまった企業(勤務先)はどのような影響が出るのでしょうか。
◆勤務先
- 介護離職者は40歳~50歳代が多く、企業にとっての中心的年代のため大きな戦力の損失につながる
- 介護離職する従業員は非正規社員より正規社員の方が多く、企業の人材管理の面でも大きな影響がでる
企業でも家庭でも中心的存在であり、家庭では子供の教育費、住宅ローンなど多くの支出を抱えた年代で周辺の状況を考えない介護離職は家族、勤務先、要介護者にとって最良の結果にならない事も多いのです。
介護離職を防ぐ官民での取り組み
介護離職をなぜ選択したか?
ではなぜ介護離職を選択したのでしょうか。仕事と介護の両立が困難なのはなぜでしょうか。この「介護離職をなぜ選択するのか」という質問に対して答えを探ることで、解決方法も見えてくるはずです。
そこで、さまざまな調査の結果を調べて答えを探してみることとしました。すると、次のようなことが各調査で共通の項目として挙げられていました。
- 介護離職しないような国の制度がない
- 長期の介護休業ができない(休んで自分の代わりになる人材がいない)
- 職場に長期の介護休暇を取るような環境がない
- 施設に入所することができなかった
- 仕事と介護の両立が肉体的に不可能であった
介護離職防止のための国の取り組み
上記のような理由で、介護離職をしないためのキーワードは「官民の介護に対しての理解と防止策」にあります。
そこで、官民で行っている具体策を見てみましょう。
まずは国の施策についてです。そもそも今の日本では、総理大臣自らが、成長戦略のひとつとして「介護離職ゼロ」を掲げており、次のような制度を整備してきました。
◆介護離職防止対策制度
制度名 | 制度内容 |
介護休業制度 | 対象家族1人につき、通算93日までの休みを3回に分けて取得できる |
介護休暇制度 | 対象家族の通院や買い物などのために年間1人5日休みを取得できる |
勤務時間短縮措置 | 短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護サービスの費用助成 |
時間外労働・深夜業の制限 | 1カ月で24時間、1年で150時間以内の時間外労働 午後10時~午前5時の深夜労働についての禁止 |
介護休業給付金 | 介護のための休業をした被保険者に支給される給付金(介護休業の開始日から過去2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある人が支給対象) |
しかしこれらの制度が介護離職を防止して仕事と介護を両立できる制度として活用されているか厚生労働省の「改正育児・介護休業法資料」からみてみると、次のように、どの制度もうまく活用されていない現実があります。
- 介護休業など制度を利用したことがある人は 15.7%
- 介護休業の利用者は 3.2%
- 短時間勤務は 2.3%
- 介護休暇は 2.3%
この結果から日本の企業の介護に対しての認識と理解が低いことがわかります。
企業の介護離職対策
では企業としてどのような介護離職対策を行えばいいのでしょうか。
- 介護に対してのオープンな職場環境の整備
- 国の制度についての社内広報を徹底する
- 利用しやすい環境づくり
1.介護に対してのオープンな職場環境の整備
職場に、介護をしていることを隠さなくていい環境を整えることが必要です。また、相談できる窓口や機会を提供すれば、従業員が「辞めるしかない」という判断をすることを防ぐことができます。
2.国の制度についての社内広報を徹底する
どんな制度があるのか社内広報を行い、全社員に詳しく周知しておくことが必要です。家族に要介護者がいる当事者になったときに、離職せずに両立していくという選択肢を後押しできます。
また、一緒に働く職場の人たちが制度を理解することは「制度を利用しやすい」ということに繋がります。
3.利用しやすい環境づくり
制度を利用するための手続きの簡素化に取り組めば、利用促進につなげることもできます。法的に外せないもの以外については、社内で柔軟に設定していくことも介護離職防止策として必要なことです。
介護離職をしないためには
仕事と介護を両立させるには
介護を必要とする高齢者は今後も増加してくる事は明確に指摘されています。
増え続ける要介護者の介護をうまく行うには要介護者の家族との連携や協力がうまく保てないと平均4年から6年と言われている長い介護生活をともに過ごすことは難しくなります。
さらに協力と理解という面で欠かせないのが企業の介護に対して支援体制の強化や整備です。
◆介護と仕事の両立の方程式
要介護者や周辺の人の協力 + 企業の介護に対しての理解と制度の推進 = 介護と仕事の両立
この方程式が最低でも整備されなければ、介護離職者は増え続けることでしょう。
介護離職者の相談窓口
「国や職場の環境が整っていない」と感じる方も多いでしょう。しかし、そういった悩みは中々、職場でも話すことができません。かといって、知識もない中で、自分や家族だけで抱え込んでしまうと、良い結果には繋がらないでしょう。もし、介護離職を選択しなければいけない状況になった時には、専門の窓口の意見や、過去の色々な相談実績を聞く事が、介護離職防止策としては有効です。
相談窓口は次のようなところがあります。
◆相談窓口
- 地元の地域包括支援センター
- 社会福祉協議会
- 保健所
- 国民健康保険団体連合会
このような専門の窓口に相談してさまざまな情報を聞く、集つめるという作業をまず行い、介護離職に正しい判断ができるよう事前の準備をすることが必要です。
介護サービスをうまく利用する方法
現在、様々な要介護者のニーズにあった「介護サービス」が用意されています。
それらの種類・特徴・費用を把握し、地元の市区町村で要介護認定を受けた上で、ケアマネジャーと相談しながらサービスをうまく活用できれば、介護者の負担が大きく軽減され、仕事と介護の両立も可能です。
介護サービスをうまく利用する方法として「介護が必要になったらどんな生活を送りたいか」「譲れないポイントは何か」などについて普段から話し合っておくと、いざというときに介護サービスをうまく利用できます。
さらに、これから介護を始める人は、豊富な種類がある介護サービスの内容をよく比較検討して、最適なものを選ぶことが大切です。
まとめ
介護は長期戦になる可能性があります。長期間の介護を行うためには介護離職も含めてヒト・モノ・カネのすべての面で計画性が必要です。
安易な介護離職をすることで後悔しないためにも、仕事と介護の両立をどう行うか。介護に直面する前に、あらかじめよく考えて、事前の準備をしておくことが介護離職防止のポイントです。
これを機会に家族で話し合ってみるのも良いのではないでしょうか。
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