身近な人が介護を必要とする時、仕事と介護の両立はできますか?
難しいのではないかと思う方が多いかもしれません。しかし、仕事と介護を両立するために、国が推進している「介護休暇」、「介護休業」という制度があります。今回は、介護休業と介護休暇の違いや利用方法について詳しく紹介していきます。
目次
介護休業制度とは
介護休業制度について
国は重要な政策として「介護離職者ゼロ」を掲げて介護休業制度が広い分野で利用されることで介護離職者の防止対策になるように推進してきました。
介護休業制度はこれまでのような「仕事か介護か」の選択ではなく、労働者が育児・介護を目的として一定期間の休みを取得することで「仕事と介護(育児)の両立」が可能になるように「介護休業制度」が施行されました。
介護休業制度内容
介護休業制度のポイントは以下の4つです。
- 企勤務している労働者が家族の育児・介護が必要になった時に一定期間、仕事を休むことができる
- 事業主は介護休業の申し出が労働者からあった時には拒否できない
- この法律の施行は、育児や介護の両立を目的に作られたもので労働者が育児や介護のために休業する権利、時間外労働や勤務時間の短縮、転勤などへの配慮、不利益な取り扱いを禁止する法律として定められている
- 介護休業制度は「介護休業」と「介護休暇」が中心でその他の制度としては・短時間勤務制度・フレックスタイム制度・始業、終業時間の繰り上げ、繰り下げ制度
このように介護休業制度を労働者が安心して自分のライフスタイルにあった休みの取り方を選択して、介護と仕事の両立ができ介護離職者の防止を行うための制度です。
介護休業制度の現状
総務省の「平成29年度就業構造基本調査結果」によると介護をしている人は約628万人で、このうち仕事を持つ人は約346万人と6割近い人が働きながら介護を行っています。
また、一方で介護を理由に仕事を辞めたいわゆる介護離職者は約9.9万人で毎年約10万人の人が介護離職者になっています。
では介護休業制度が施行されて、なぜ介護離職者が減少しないのか厚生労働省の「平成29年雇用均等基本調査」によると次のような調査結果が報告されています。
【事業所規模別】介護休業制度導入状況
では次に、事業所別の介護休業制度同導入状況を見ていきましょう。
事業所規模 | 導入割合 |
従業員30人以下 | 50%~70% |
従業員30人以上 | 70%以上 |
従業員500人以上 | 約100% |
上の表からも分かるように、事業所の規模が大きくなればなるほど、介護休業制度、介護休暇制度、短時間勤務制度の導入が実施されています。しかし一方で、労働者の利用率は3割程度と低く制度が十分に活用されていません。
介護休業制度が利用できない理由
ではなぜ介護休業制度が利用されないのでしょうか。その原因はどこにあるのか、厚生労働省の「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究報告」によると、次のような介護休業制度を利用できないが報告されています。
介護休業制度を利用できない理由 | 割合 |
介護休業制度がない | 45.7% |
介護休業中仕事を代わってもらえる人材がいない | 20.8% |
介護休業制度を利用しにくい職場環境 | 18.8% |
介護休業制度がわからない | 15.1% |
介護休業制度を利用している人がいない | 13.7% |
上司、同僚が利用することを望まない | 10.5% |
介護休業制度を利用すると収入が減る | 6.0% |
家族、親族の理解と協力が十分に得られない | 4.5% |
一度しか利用できないため | 3.5% |
この報告書でわかるように、介護休業制度の利用率が高くならないのは、企業の介護に対しての認識が低く、介護休業制度を取りやすい職場環境の整備が十分ではないためです。
介護休業と介護休暇の違い
介護休業制度の内容と利用状況について分かりましたでしょうか?
さて、次に「介護休業」と「介護休暇」の違いについて紹介します。
介護休業と介護休暇の目的は同じ介護を要する家族や親族の世話をするために自分の有給休暇とは別に一定期間休みを取ることができます。内容的にどう違うのかは次に取り纏めました。
内容 | 介護休業 | 介護休暇 |
目的 | 対象家族の生活支援のためにとることができるまとまった休み | 対象家族の通院や諸手続きなどのために単発的な休み |
期間 | 対象の家族1人につき通算で93日まで3回を上限として分割で取得できる | 対象家族1人につき1年に5日、2人の場合10日時間単位または半日単位での取得が可能 |
対象労働者 | 同一事業主に1年以上雇用されている労働者、介護休業取得中契約が満了を迎えない労働者 | 雇用期間が半年以上で日雇い労働者以外正社員、パート、アルバイト |
給与 | 社会保険で総支給額の2/3が支給 | 法的な定めはなく各企業の判断で行われます。多数は無給 |
介護休業と介護休暇には取得できる日数や申請方法、給与などに違いがあります。
介護休業制度も改正で労働者が取得しやすい制度になってきましたが、まだ給与面や職場環境の整備などで不安を抱える労働者が多く利用率が伸びない現状を注目すべきでしょう。
介護休業・介護休暇の申請方法、給与は?
介護休業・介護休暇のポイント
勤務先で介護休暇や介護休業の申請をする上で、覚えておくと良い点は次のような事が挙げられます。
- 事業主は介護休業や介護休暇の申請を拒否できない
- 介護休暇や介護休業を取得しても差別的な待遇や解雇される理由はない
- 降格や減給、賞与の削減などの労働者側が不利益になることも同法律で禁止されています
親の介護が必要となる年代で最も多いのが40歳代~50歳代で、その年代は企業でも中間管理職的立場で長期間の介護休業により生産性の低下の心配があるために、申請をなかなか受け付けてもらえないこともでてきます。
しかし介護休業、介護休暇はどちらも法律で定められた労働者の権利ですので積極的に活用して良いのです。
申請方法
まずは介護休暇の申請方法についてです。
◆介護休暇の申請方法
介護休暇の場合は、特に書面に記入する必要はありません。休暇を取る当日に口頭で伝えれば取得できます。
続いて、介護休業の申請方法についてです。
◆介護休業の申請方法
介護休業開始予定日と終了予定日を明確にして開始日の2週間前に申請しなければなりません。早めに対応することがポイントです。
給与は減給せれるのか?
介護休業、介護休暇共に休むことによって収入に影響することが最も心配と不安の材料になります。それぞれの場合で、給与が減額されるのかを見ていきましょう。
まずは介護休暇の場合です。
◆介護休暇の場合
- 法的な給与の定めなし
- 各企業の判断
介護休暇を申請した時、法的には給与の定めはありません。各企業の判断によります。大手企業では休みの何パーセントかを支給してもらえるところもあるようです。一方で、中小企業ではほとんどで無給な企業が多数です。介護休暇での収入のリスクを考えると、自分の有給休暇で休む労働者が多く,収入面を改善しなければ介護休暇の利用率を上げる事は困難な状態が続きます。
続いて、介護休業の場合です。
◆介護休業
- 「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」を支給
- 支給上限額は31万2,555円
- 支給下限額は4万6,029円
介護休業中の給与は社会保険から総支給額の2/3が支給されます。正確には「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」が支給されます。また、給付額には上限が設定されています。上限額は46万6,500円と定められていますので、それの67%の31万2,555円が上限となります。下限額は6万8,700円で実質支給額は4万6,029円になります。介護休業中は、今までの給与の2/3の給与で生活しなければいけない為、現実としては、自分の貯蓄を使うことになります。
また、たとえ給与が高額であっても介護休業取得中は31万上限で生活を行う事になります。収入が減るために介護休業制度を利用しない労働者も多くいるようです。
介護休業制度と助成金
介護離職防止支援助成金
国も介護休業制度の導入率や利用率が低い事で、介護離職者が増え続けている現実に危機感をもち、平成30年に「介護離職防止取組助成金」が改定されました。
介護離職者が減少しない原因が企業の職場環境整備にあると判断し、介護休業制度の推進のための取り組みを行った事業主に、次のような助成金を支給することになりました。
介護離職防止取組助成金の支給対象事業主
介護離職防止取組助成金の支給対象者は以下の事業主です。
- 仕事と介護を両立するための職場環境整備の取組を行い「介護支援プラン」を作成したうえで、介護休業の取得・職場復帰を 積極的に取り組んだ事業主
- 介護のための勤務制限制度(介護制度)の利用を円滑にするための取組を行った事業主
介護離職防止取組助成金の支給金額
続いて、事業主への助成金の支給金額についてです。
- 従業員が1か月以上の介護休業後に復帰した場合
⇒1人あたり40万円(中小企業は60万円) - 従業員が、介護のために所定外労働の制限、時差出勤、深夜業の制限などの勤務時間にまつわる介護制度を3か月以上活用して働いた場合
⇒1人あたり20万円(中小企業事業主30万円)
これらは事業主に支払われますが、事業主に助成金を支給することで、事業主の介護休業制度が、より労働者にとって良いものとなります。つまり、労働者が安心して介護休業の取得・職場復帰ができるようにするための助成金なのです。
まとめ
介護離職は介護をする家族にとって、職をなくすことで収入面や再就職などの様々な問題を抱えます。仕事と介護の両立は家族にとって、生活を一変するような重大な決定事項です。
そのような家族の負担軽減のために介護休業制度があります。この制度の問題点は、利用する労働者にとって最も重要な事が「利用者のための制度」と、「利用できる職場環境」が不十分だということです。利用者側も積極的に利用することで、社会的な認知を広めていくことも重要です。
また、ご自身で利用する場合は、まず会社の制度を確認してみてください。
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